畑及び水田土壌の作物生産に深く関わる土壌中の物質代謝(養分循環)に果している土壌徴生物の役割をより深く洞察するためには、土壌をその構成要素に分け、どの部分が徴生物活動の拠点(Active Site)になっているのかを定量的に解明し、徴生物の活動拠点が似肥管理によりいかなる変動を示すかを解明する必要がある。 そこで、我国の主食の米及び欧米の主食の小麦を生産する施肥管理を異にする水田及び畑土壌を選び、種々の粒径の植物遺体画分、シルト及び粘土画分等の各構成要素に、和田・金沢の土壌の物理的分画法により分離・分画した。供試土壌は、農水省農業センタ-の長期肥料運用水田圃場及びドイツのベルリン郊外の小麦連続裁培畑圃場を用いた。得られた諸画分につき、各種徴生物数及びバイオマス、及び炭素・窒素・燐化合物の分解に関与する酵素活性を測定した。得られた結果を要約すれば、次のごとくである。 1)水田及び畑土壌ともに、植物遺体画分(〉37μm)の各種徴生物数、バイオマス量及び酵素活性はその粒径が細かくなるに伴って減少した。粘土画分の徴生物数量は、シルト画分よりも著しく高く、粒径の細かい植物遺体画分に相当するほど富化していた。無機質粒子画分の徴生物活動は極端に低かった。 2)全土壌に占める植物遺体画分の割合は水田及び畑土壌ともにほんの数%にすぎないが、徴生物数は25〜79%、バイオマスは39〜68%、酵素活性は29〜68%もそれぞれ占めていた。これらの結果から、土壌の物質代謝の“Active Site"は植物遺体画分であることが明らかとなった。また、土壌の物質代謝の“Active Site"を担う植物遺体の量は、有機物施用(堆肥)区で最も多く、次いで化学肥料区、無肥料区で最も少なかった。
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