研究概要 |
本研究は茶園土壌に生息する微生物群とその生化学活性の検討を通じて強酸性環境における微生物社会の特徴を明らかにすることを直接の目的としたものである。本年度は実施計画に基づいて以下の検討を行った。 I.微生物バイオマスの検討 土壌管理法の異なる4種の茶園土壌および比較のためpHの異なる5種の耕地,未耕地土壌を試料とし,ATP法,くん蒸抽出(FE)法,基質誘導(SIR)法によって微生物のバイオマスの比較を行った。茶園土壌のバイオマスはいずれの方法を用いたときでも他の土壌よりも多かった。FE法によるバイオマスとATP含量との相関の結果から,茶園土壌の微生物は相対的にATPが高いことが示された。酸性培地を用いた希釈平板法による菌群の検討結果からも,強酸性茶園土壌に特徴的な微生物フロラの存在が示唆された。 II.通気法および密閉カップ法によって種々の有機物分解活性を比較検討した。1)グルコ-スの分解速度は中性耕地土壌とほぼ同様であったが抗生物質による阻害実験から,強酸性茶園土壌では主として糸状菌が関与し,一方中性耕地土壌では細菌が関与することが確かめられた。2)乳酸,クエン酸の分解速度も両種土壌で同様であった。しかしpーヒドロキシ安息香酸,バニリンなど芳香族化合物の分解活性は茶園土壌で顕著に高い値を示した。分解に関与する菌群は主に細菌と考えられた。茶園土壌の分解パタ-ンは森林土壌と類似していたが中性耕地土壌では大きく異なっていた。中性耕地土壌でバニリンの分解が遅いのはバニリン酸以降の分解に律速段階があることがHPLCによる分析結果から明らかになった。 III.強酸性環境下にもかかわらず茶園土壌は顕著な硝化活性を示した。土壌の化学分析の結果この土壌は多量の硝酸を含んでいたが,これは強い硝化活性と関連すると考えられた。
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