茶園土壌は一般に強い酸性を示す。これは多量の硫安施肥と強い硝化活性によるものである。生成した硝酸根はまた深刻な環境汚染を引き起こすことが懸念される。茶園土壌の微生物活性は酸性条件にもかかわらず一般に高く、その微生物相の構造と機能の解析は微生物生態学の面からもまた環境科学的にも重要な課題と考えられたので、本研究では強酸性茶園土壌の微生物とその活性に関する検討を行った。 希釈平板法による生菌数とバイオマス:希釈平板法による茶園土壌の菌数は中性耕地と比べて細菌で22%、放線菌で13%、糸状菌で18%と低かった。しかし燻蒸抽出法及びATP法によるバイオマスはそれぞれ410%、169%で、質的に異なった微生物相の存在が推察された。茶園土壌の微生物数は計数培地のpHによって異なり、ph4.5培地での菌数は細菌ではpH7.0培地の1.6倍、放線菌で3.5倍で、酸性環境に適応した微生物の存在が示唆された。 抗生物質阻害法によるグルコース分解菌群の検討:茶園土壌のグルコース分解はストレプトマイシン(SM)で阻害されず、シクロヘキシミド(CH)で部分的にのみ阻害された。従って両抗生物質に抵抗性の菌群の関与が示唆された。中性耕地土壌ではSM阻害が顕著で、細菌の関与が大きいと考えられた。 生化学活性:茶園土壌は中性耕地土壌と同等あるいはそれ以上の速度でグルコースを分解し、また硝化活性を示した。また、バニリン(VN)分解活性は茶園では著しく高いのに対し、中性耕地土壌では低く、バニリン酸(VA)の長期間の蓄積がみられた。茶園土壌のVN分解パターンは林地と類似していた。茶園土壌でのVNからVAへの酸化はSM、CH両抗生物質では阻害されなかったが、VAから二酸化炭素への分解はCHでほぼ完全に阻害され、糸状菌の関与が示された。以上の結果、強酸性茶園土壌では特異的な土壌生態系が構成されていることが推察された。
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