研究概要 |
昨年度,アルミニウム(Al)ストレスに対する応答反応としてオオムギ根液胞膜のH^+ポンプ活性の増加をみつけたが,その機構について詳細に検討した。即ちあらかじめ負荷したK^+の存否に強く影響を受けAlストレスにより負荷したK^+が排出され,それに連動して液胞膜のATP及びPPi依存のH^+ポンプ活性が誘導された。またAlストレスを加える時,Ca^<2+>が存在するとK^+の排出とH^+ポンプ活性の誘導も抑制された。これらの結果はAlストレスにより原形質膜H^+ポンプが阻害され,その結果,細胞質のpHが変動することと,原形質膜の膜電位の脱分極が起るが,それを修膜恒常性の維持)するためH^+を液胞へ輸送する必要があり,この現象はAlストレスに対する生理的耐機構の一つであると考えられた。次にこの誘導過程での細胞内変化の一つとしてストレスホルモンとして知られるABALアブサイシン酸)を定量した。その結果,50μMのAl処理で約2倍にABA含量が増加しかつ原形質膜のH^+ポンプの阻害剤であるバナジン酸により4.5倍にも増加していた。次にABAの増加と液胞膜のH^+ポンプの誘導について調べた結果,50μM Al処理でポンプ活性は約1.5倍に増えた。同時にABAとバナジン酸でもATP-,PPi依存H^+ポンプ活性は約1.5倍に増加した。これらの結果からAlストレスによってABAが増え,その結果液胞膜H^+ポンプの活性が誘導されることが分った。一方,培養細胞を用いた実験でリン酸欠乏処理により一過性のAl耐性を誘導することを昨年,明らかにしたがその過程で発現する分泌性のタンパク質について調べた。その結果リン酸欠乏処理で発現される分泌性の数種のタンパク質がみつかったが,それらの中にはAlストレスが加えると短時間で数倍にも発現が増加するものもあり,現在これらのタンパク質をAl耐性機構との関連から更に検討中である。
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