研究概要 |
土壌の元素状セレンに関して検討を行い,以下の結果を得た. 1.前年度に検討した土壌中の元素状セレンの選択的定量法を改良して以下の方法を組み立てた. 土壌水分をアセトンを中間溶媒に使用して除去した後,二硫化炭素抽出を行い,元素状セレンを抽出した.抽出溶媒を蒸発させた残渣にシアン化カリウムを作用させて元素状セレンをセレノシアン酸イオンSeCN^-に変換し,SeCN^-をトリス(1,10-フェナントロリン)亜鉛(II)陽イオンと共にニトロベンゼン-クロロホルム混液にイオン対抽出して他のセレン化学種から分離した.この方法で分離したセレンを定量して,土壌中の元素状セレンを選択的に定量できた. なお,SeCN^-をテトラブチルアンモニウムイオンを対イオンに用いた逆相イオン対クロマトグラフィーで分離し,電気化学検出して高感度に分析する方法を併せて検討した. 2.上記の方法を活用して,土壌を湛水して元素状セレンの生成を追跡した. その結果,セレン(IV)含量の少ない土壌では,pHと酸化還元電位(Eh)が元素状セレンの生成領域に達しても,元素状セレンの生成は殆ど認められなかった.しかし,セレン(IV)含量の多い土壌では,湛水3週間後に数10mug/kgの元素状セレンの生成が認められ,セレン(IV)が元素状への前駆形態と推定された.なお,元素状セレンの生成と土壌Ehの変化の間に時間的ずれが見られ,土壌中でのセレンの酸化還元反応の緩慢なことが示唆された. 3.動物の尿中に含まれるトリメチルセレノニウムイオン(TMSe^+)は,土壌中で微生物によって速やかに分解を受けガス状のジメチルセレン等に変化する.しかし,TMSe^+の一部は元素状に変換するとの指摘もある.そこで,TMSe^+を土壌に添加して,TMSe^+の一部が元素状セレンに変換することを確認した.
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