研究概要 |
土壌セレンの存在形態と変化を土壌化学的な観点から検討し,以下の結果を得た. 1.土壌セレンを,腐植酸中に含まれる有機態セレン,フルボ酸中に含まれる高分子態の有機態セレン,セレノアミノ酸のような低分子有機態セレン,無機態亜セレン酸塩,無機態セレン酸塩の5形態に分別定量する方法を確立した.確立した方法を応用して,各種土壌のセレンの存在形態を分析し,土壌セレンの50%以上が有機態で存在することを明らかにした. 2.土壌セレンの形態変化を検討した.土壌セレンの各形態は極めて安定で,土壌を約40日間湛水インキュベートしても顕著な形態変化は認められなかった.また,土壌を加熱すると,土壌の有機態セレンの減少,無機亜セレン酸の増加が起こった.さらに生成した無機亜セレン酸は300℃以上の加熱で徐々に昇華し,土壌の全セレン濃度が低下した. 3.土壌中の元素状セレンの選択的定量法を開発した.この方法を活用して,土壌を湛水放置すると元素状セレンの生成すること,元素状セレンの前駆態として亜セレン酸塩が推定されることを明らかにした. また,土壌に添加したトリメチルセレノニウムイオンが土壌微生物によって分解され,一部が元素状セレンに変換することを確認した. 4.沖縄県の石垣島,久米島,宮古島に分布する土壌(石灰岩由来土壌,非石灰岩由来土壌)の全セレン濃度と可溶性セレン濃度を調査した.
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