研究概要 |
我々はニワトリの性決定と性分化に働いている遺伝子の探索を行ってきたが、一方ニワトリの性決定と性分化に極めて重要な働きをしていると考えられるエストラジオール合成に関わる酵素群のcDNAをクローニングし、それらをプローブとしてニワトリ初期胚におけるこれらの酵素遺伝子の発現を追跡し、それらの遺伝子の初期胚における発現制御機構を探る為の実験を行ってきた。この結果、新たにチトクロームP-450c172種、P-450scc、及びステロイド3βHSDの4酵素のcDNAを得た。またアンドロステンジオンをテストステロンに変換する17βHSDも、ニワトリ卵巣由来cDNAライブラリーよりその候補クローンを得て現在解析中である。さらにエストラジオールを直接合成し前述のホルモン合成系のkey enzyme と考えられるP-450aromに対する誘導ホルモンである卵胞刺激ホルモン(FSH)のレセプターcDNAも得た。 このうちP-450c17cDNAでは従来型に比べ動物細胞への導入実験において20-30倍強い活性を持つクローンと、17α-hydroxylase 活性を残し、17,20-lyase活性のみ失ったクローンの2種を新たに得た。3β-HSD cDNA については cos7細胞にその発現型ベクターを導入し活性を確認した。ニワトリFSHのレセプター cDNAはその全長を得、この発現型ベクターをヒト293細胞に導入し、ヒトFSHを用いたラジオ-レセプターassayによりそのレセプター活性を確認した。 cDNAクローニングとは別にニワトリ P-450aromについてはそのゲノム遺伝子上流域 5000bP以上の塩基配列を決定し、さらにこれにcatレポーター遺伝子を連結した組替え体 DNAを作製しニワトリ卵胞のきょう膜由来初代培養細胞および初期胚由来繊維芽細胞に導入して、アロマターゼ遺伝子の発現制御エレメントの同定を行っている。
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