研究概要 |
近赤外線は濃厚な溶液とか、固体試料をも透過する、極めて有為な電磁特性を持っている。本年度は、酵素の触媒活性に及ぼす照射効果を検討しようとした。光源(島津ハロゲンランプユニット)および分光器(島津スペクトロメイト)を組み合わせて近赤外線照射装置を製作した。製作器の性能試験を各種実施した処、光量は充分でないことが判明し、フィルター及びスリットを撤去するなどの調製を行った。また、可視光ならびに赤外光が検出できる機器ベータムービー及びベータマックスの部品、パーツなどを用い、近赤外線を受光できる装置を組み立てた結果、検出器として活用できる良い成績を得た。ただ、当初計画した光ファイバーは、近赤外線に専用ファイバーの製造に時間と経費を要すること、間口と出口との間で光量がかなり減少してしまうこと等の難点を考慮し、本年度内の導入を断念することとした。 細菌(Bacillus)の産生するα-アミラーゼ(17μM、pH6)をセルにとり、近赤外線を照射したのち、澱粉を基質とした触媒活性をアミラーゼ自動活性測定器を用いて観測した。1,500nm、10V、20minの照射に依って、澱粉の水解は約2倍加速された。また、生体内の酸化還元作用に関与する酵素チロシナーゼ(マッシュルームからの標品)に対する照射効果を調べた。酵素溶液(0.5mg/ml)を四面石英セルにとり、反応測定装置の観測室に置き、近赤外線(1000及び700nm、14V)を照射(30min)し、または照射(60min)しながら、チロシンを基質とした触媒活性を、280nmにおける吸収を指標として経時的に観測した。照射により、チロシナーゼ反応の加速が観測された。ただ、現段階では加速効果は充分ではない。そこで、光源に大容量のレーザを導入し、分光器を改造して波長精度をあげ、水フィフターを製作して、反応加速に及ぼす近赤外線照射の効果を格段に高める試験・研究に、引き続き取り組んでいく。
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