枯草菌secY遺伝子の変異によって胞子形成が温度感受性になった株をさらに解析した結果、この株が正常に胞子形成をするためには、T_0からT_5までの間許容温度にいる必要があることが明かとなった。この期間はちょうど胞子形成特異的な非対称隔膜の形成からフォアスポアの形成期に当たり、この過程にsecY遺伝子が何らかの機能を果たしていることを示唆している。一方、胞子形成の初期過程においては細胞内外の種々のシグナルが集積されてSpoOA蛋白質の増幅を起こすことが、胞子形成をつぎの段階へ進めるキ-になる現象と考えられているが、secY変異株では、このspoOA遺伝子の発現が抑制されており、新たな情報伝達経路の存在が示唆された。一方、spoOAの転写活性促進に関与しているSpoOKに対する影響についても、この蛋白質の機能と考えられている抗生物質ビアラフォスに対する感受性が低下しており膜蛋白質であるSpoOKの膜への局在化に影響していることが示唆された。 またsecEに相当する遺伝子については、大腸菌との相同性から、リボソ-ム蛋白質L11をコ-ドするrplK遺伝子の上流領域をクロ-ン化することによって検索したが、若干の相同性を持つ短いオ-プンリ-ディングフレ-ム(orfE)を見いだした。OrfEはただ一つだけ膜貫通ドメインを持つと考えられ、大腸菌secEcs変異株に導入して相補実験を行なったところ、低温における増殖能、および外膜蛋白質OmpAのプロセシングの両方とも相補することができた。したがってorfEは、大腸菌secEに相当する枯草菌の遺伝子であると考えられた。
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