研究概要 |
細菌による3-ヒドロキシ酪酸(3HB)と3-ヒドロキシ吉草酸(3HV)で構成される共重合ポリエステルは、グルコースと吉草酸を炭素源として生産されている。しかし、これらの炭素源は価格が高いという欠点があることから、より安価な炭素源を用いて共重合ポリエステルを生成できる能力を有する菌株の検索を行うことを第一の課題とし、次に検索の結果選んだ菌株のポリエステル生合成に関与する遺伝子を単離し、解析を行うことを第二の課題とした。まず第一の課題である炭素源と菌株の検討に関して、前年度の結果、メタノール資化性細菌であるParacoccus denitrificansが比較的安価な炭素源であるメタノールとn-アミルアルコールから共重合ポリエステルを生成できることを初めて見い出したことから、本年度、本菌株について検討を加えた。本菌株は、n-アミルアルコールの培地中濃度に依存して、生成ポリエステル中の3-ヒドロキシ吉草酸含量が0〜92モル%まで幅広い組成のポリエステルを生成する特徴を有するのみならず、n-アミルアルコールで生育させた場合には、増殖連動的にポリエステルが生成され、しかも、その組成において99%以上が3HVとなる他の菌株では報告されていない特徴も有していた。第二の課題であるP.denitrificansのポリエステル合成遺伝子に関しては、すでに塩基配列が明らかなAlcaligenes eutrophusの3つの関連遺伝子であるphbA,phbB,phbCを含むDNA断片をプローブとして用い、P.denitrificansの染色体DNAに対してサザンハイブリダイゼーションを行い、各遺伝子に相同性の高い領域を見出した。その領域を大腸菌にクローニングし、制限酵素地図を作成するとともに、3つの遺伝子の染色体上における相対的な位置関係を決定した。その結果、P.denitrificansのものは、既に明らかとなっているA.eutrophus等のものとは異なる遺伝子配置をとっていることが認められた。
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