研究概要 |
細菌Enterobacter aerogenesの有するCーP結合解裂酵素の精製,酵素化学的諸性質,本酵素遺伝子のクロ-ニング,本酵素の遺伝子の発現機構の解析を進めた。この酵素の基本的な反応機構とサブユニット構造(E_2とE_3の2種のサブユニットから成り,E_3は更に6種のサブユニットから構成されている。E_2は分子量55,000のサブユニット2個から成る。本酵素の全分子量は670,000である。)を明らかにした。E_2とE_3の全てをコ-ドする25キロベ-スのDNA断片をクロ-ニングした。このDNA断片を13キロベ-スと12キロベ-スの2種のDNA断片に分割し、これら2種の断片をCーP結合解裂活性のない大腸菌HB101株に導入して解析した。その結果、12キロベ-スのDNA断片上にE_2の遺伝子が存在していた。また、E_3の6個のサブユニットをコ-ドする遺伝子は,12キロベ-スと13キロベ-スの両断片上にまたがって存在していることが判った。E_2の遺伝子の塩基配列を決定するため、12キロベ-スDNA断片の制限酵素による分割を試みている。E.aerogenesのCーP結合解裂酵素は上述したように極めて複雑である。より簡単な構造のCーP結合解裂酵素を得るために、土壌細菌から本酵素のスクリ-ニングを行い、無細胞系でCーP結合解裂活性を示めす数種の細菌を取得した。その中で、特に強い活性を示めす一菌株CP10株について、その酵素化学的性質を検討した。本菌の有するCーP結合解裂酵素は、E.Aerogenesの酵素とは異なり、総分子量120,000で2種の相異なるサブユニットS_1(分子量55,000)とS_2(分子量65,000)から成っていた。CP10株の酵素は、E.aerogenesのそれより構造的に簡単なため、この酵素の遺伝子のクロ-ニングも試みた。その結果、大腸菌HB101株にCーP結合解裂活性を与えるCP10株由来のDNA断片を得た。また、CP10株は巨大細菌であるため、その同定と培養工学的特性についても検討を進めた。
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