研究概要 |
研究代表者らが見い出したAcremonium sp.HI-25のアスコルビン酸オキシダーゼは微生物由来酵素として初めて得られた新規な酵素である。本酵素が高等植物由来のアスコルビン酸オキシダーゼとどこが異なっているのかを明らかにするとともに,診断薬への応用などを目的に研究を行い,本年度は以下に示す成果を得た。 (1)培養ロットのちがいで得られる不安定な酵素は,本来の安定な酵素がプロテアーゼで限定分解されて生じることを明らかにした(この分解が培養中にではなく,酵素の精製中に起こる)。さらにこのプロテアーゼの精製を行い諸性質を調べた結果、セリンプロテアーゼであることを明らかにした。限定分解を受けたアスコルビン酸オキシダーゼは耐熱性が元の酵素と比べ15℃低下した不安定なものであるが,比活性,モル当りの糖含量,銅含量などには変化がなかった。またN未端アミノ酸を分析したところ,安定な酵素とは異なることから,N未端部分が水解を受けたものと推論した。原子吸光分析,可視紫外・EPRスペクトル分析から,本酵素(安定,不安定いずれも)は4グラム原子の銅を含むことを明確にした。 (2)本酵素の臨床分析への応用性について検討し,ヒト血清中のコレステロール測定系へ利用できることを明らかにした。また,さらに,アスコルビン酸を定量する目的で検討を行い,反応液の溶存酸素消費速度を測定することにより,アスコルビン酸の簡便な測定ができることも明らかにした。近い将来,本酵素の分析試薬としての実用化が期待される。 (3)なお,上記の酵素の他に放線菌FU-21株の中性アスコルビン酸オキシダーゼについては,その精製法に確立ができた。
|