研究概要 |
1.カラマツ(Larix leotoleois)カルスからの無細胞抽出液によるファルネシルピロリン酸(FPP)からのα-セドレンを含むbisabolene系列のセスキテルペンへの環化に関する研究を行った。無細胞抽出液は、FPPのうち2z-異性体を特異的に環化し、α-セドレンを生成した。無細胞抽出液を遠心操作により分画したところ、2000g上澄、46200g沈殿部に活性が認められた。この酵素活性は、界面活性剤により可溶化し、EDTAでは可溶化しないことから、酵素は両親媒性または疎水性の膜タンパクと考えられる。カラマツカルスに蓄積されるα-セドレンの絶対構造については、キラルなカラムを用いたGC及びGC/MS分析によって、(+)-α-セドレンと決定した。(+)-α-セドレンは天然で初めて検出された。以上の酵素の諸性質並びに(+)-α-セドレンを生成する過程の立体化学は、植物そのもので認められものとは著しく異なる。 2.コケ(Heterosoyohus planus)液体培養細胞の生成する低級テルペンを分離した。そのうち、(-)-(1S)-7-methoxy-1,2-dihydrocadalene,(+)-(1S,4R)-methoxy-calamenene(新規),(+)-(1S,4R)-hydroxycalamenene(新規)及びmethoxy-cadaleneを、各種分光学的データ並びに化学的な関連付けによって構造決定した。重水素で特殊標識したメバロン酸の投与実験によって、これらのcadalene系列の化合物の生合成過程で水素転位が生ずることが明らかになった。また、培養細胞からの無細胞抽出液は、2E-FPPのみを特異的にcadinane骨格のセスキテルペンに転換した。 3.アカチリメンシソのカルス中でのbisabolane系列のセスキテルペン(cuparene,β-bisabolene,α-curcumene)の生成過程で水素転位を生ずることを重水素で特殊標識したメバロン酸の投与実験で証明した。
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