糖鎖工学に基づく新しい機能糖鎖の開発

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03660133
• 研究機関: 岐阜大学
• 研究代表者: 木曽 真 岐阜大学, 農学部, 教授 (90092931)
• 研究分担者: 長谷川 明 岐阜大学, 農学部, 教授 (10026429)
• キーワード: 機能性オリゴ糖鎖 / シアリルLe^X / セレクチン / 1ーデオキシノジリマイシン

研究概要

本年度の研究実施計画の〔1〕で掲げて、「糖タンパク質及び糖脂質に含まれる機能性オリゴ糖鎖の構造と機能相関の解明」においては、既にその合成法を確立したNeu5AcーGalactoseユニット(α2→3及びα2→6結合二糖糖鎖)をグリコシル供与体として利用することにより、ラクト系、ネオラクト系、ガングリオ系を中心に各種のガングリオシド及びその機能性オリゴ糖鎖を系統的に合成した。特にネオラクト系に属するシアリルLe^X糖鎖を中心とした構造と機能相間を空明するため、血管内皮細胞や血小板に発現されるELAMー1(Eーセレクチン)およびGMPー140(Pーセレクチン)などの細胞接着分子との反応性を解析した。その結果、これらの接着分子は、シアル酸をレ-フコ-スを含むシアリルLe^X糖鎖エピト-プをリガンドとして接着機能を果すことが明らかとなり、白血球を介する効的免疫機構のしくみを分子レベルで解明することができた。これにより、糖鎖工学の基盤技術である糖鎖の再構成および化学構造の変換が可能となり、新しい機能糖鎖の開発を行っている。これらの成果は、J.Carbonydr Chem,Carbhydr,Res,J.Biochem,ならびにProc.Natl.Acad.Sci.USAに発表され、また、油化学や現代化学にまとめて報告されている。研究実施計画の〔2〕で掲げた、「糖転移酵素を用いる糖鎖合成と分析技術の確立」については、2ーアミノピリジン誘導体を糖受容体として検討したとこめ、予想通り糖鎖合成が可能であることを証明した。また〔3〕で掲げた、「糖鎖に新機能を賦与する一つの試み」として、糖鎖プロセシング阻害剤である1ーデオキシノジリマイシンの化学修飾ならびに新機能糖鎖の開発研究を行った。これらの成果については、現在報告作成中である。

研究成果

• [文献書誌] Kiso,M.,Kitagawa,M.,Ishida,H.&Hasegawa,A.: "Studies on glycan processing inhibitors:Synthesis of Nーacetylーhexosamine analogs and cyclic carbamate derivatives of 1ーdeoxyーnojirimyin." J.Garbohydr.Chem.10. 25-45 (1991)
• [文献書誌] Kameyama,A.,Ishida,H.,Kiso,M.&Hasegawa,A.: "Total synthesis of sialyl Lewis x." Carbohydr.Res.209. C1-C4 (1991)
• [文献書誌] Suzuki,Y.,Kiso,M.,Hasegawa,A.et al.: "A new monoclonal antibody directed to sialylα2ー3lactoneotetraosylーceramide and its application for detecion of human gastrointestinal neoplasmas" J.Biochem.109. 354-360 (1991)
• [文献書誌] 木曽 真・長谷川 明: "生理活性糖脂質グングリオシドの系統的化学合成" 油化学. 40. 370-378 (1991)
• [文献書誌] Prabhanjan,H.,Kiso,M.&Hasegawa,A.: "Total synthesis of ganglioside GDlα" Carbohydr.Res.222. C1-C4 (1991)
• [文献書誌] Tyrrel,D.,Kiso,M.,Hasegawa,A.,Brandley,B.K.et al.: "Structural requirement for carbohydrate ligand of Eーselectin" Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 88. 10372-10376 (1991)
• [文献書誌] 長谷川・木曽 真(分担執筆): "バイオシグナルとしての糖鎖(現代化学特集)" 東京化学同人, 72 (1991)