研究概要 |
栽培植物を圃場で成育させた場合に、同一の植物品種を栽培しても、圃場によって病害の発生状況に大きな差異が認められることはよく知られている。このような現象には圃場病害抵抗現象と呼ばれる非常に複雑な生態反応が関与すると見做されていた。近年この圃場病害抵抗現象について農業生態学的に多面的な解析が進むに連れて、その一つの要因として土壌微生物のフローラが重要な役割を演じていることが多数の植物病害で指摘されるようになった。本来土壌伝搬性植物病害はPythium,Rhizoctonia属などの土壌生息型寄生菌の生息密度が過度に増大することに起因する。今回私達は上記のような観点に立って圃場抵抗現象の1例を化学的に解明する目的で、圃場抵抗反応を示す土壌から種々の生息細菌を分難して検索した結果、分離した幾種かのPseudomonas属の細菌(P.cepaciaおよびP.fluorescensと同定)から強い抗菌作用を示すAlteri-cidin類と命名した一連の新規ペプチドを単離し、本物質の構造研究を行なたが、未だに全構造を提出するにはいたっていない。また、植物病原菌の宿主選択機構を解明する目的で、オオムギ葉枯れ病菌(Bipolarissorokinana)の生産する宿主選択的毒素を検索し、本菌のPSA寒天培養により活性物質として2種の毒素AとBを単離した。種々の機器分析による構造解析の結果、AはC14H2402の分子式を有し、その構造は1,7-dimethyl-8-hydroxymethyl-4-isopropyl-bicyclo【3.2.1】octane-6-oneと決定された。本毒素Aは本菌の胞子発芽液中にも検出され、50PPmでオオムギ葉を特異的に壊死させる。また毒素Bの分子式はC17H2604で、目下その構造を解析中である。以上は我々の研究の現在の進行状況を述べたものであるが、やがて第一次の目標は達成されると考える。
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