研究概要 |
これまでに、グルタチオン合成酵素・基質複合体の結晶構造解析を行ってきたが、基質結合部位の詳細を明らかにするにはいたっていない。 推定されたγ-グルタミルシステイン結合部位近傍に存在し、相互作用をすることが予想される残基、Lys18,Arg86,Arg210,Asn283,Ser286,Thr288,Glu292をそれぞれ部位特異的変異導入法を用いて他の各種アミノ酸に変換し、その諸性質を解析することによって、γ-グルタミルシステインはArg86とArg210の間に存在し、Thr288によってシステイン部分が認識されることが判明した。 Adenosine(5´)polyphospho(5´)pyridoxalを用いたAffinity Labelingの結果、修飾される残基は結晶構造解析によって示されたATPの結合部位近傍に全て存在すること、修飾試薬との複合体酵素の結晶解析によって示された修飾試薬の結合部位がATPの結合部位と一致することから、ATPの結合部位が決定された。 活性部位の近傍に位置するフレキシブルループはその位置から酵素活性に関与することが示唆されている。このループ構造上のPro227,Gly229,Arg233,Gly240,Arg241の変異やループ構造の除去などにより作製した変異型酵素の解析から、ループ構造は酵素活性に必須であることが判明した。すなわち、γ-グルタミルシステインがATPによって活性化された不安定な反応中間体の加水分解を防ぐと共に、水分子との識別を含めたグリシンの基質特異性の制御、基質の結合部位における配向性を反応に都合のよい形にすることで基質の反応性を向上させることに関与していることが判明した。 これらの結果から、ループ構造の改変やγ-グルタミルシステインの結合部位の改変により基質としてγ-グルタミルシステインやグリシン以外のペプチド、アミノ酸を高い効率でとり込むことのできる変異型酵素が作製できると考えられ、ペプチド合成への応用が期待できる。
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