研究概要 |
生物活性物質の探索にあたり、酵素阻害は一つの目標となる。その際、基質アナログより遷移状態アナログがはるかに有利である。なお、実際の酵素反応は多くの中間体と遷移状態を経て進行するから、活性中間体アナログも良い阻害剤となり、また、エントロピ-の面で有利な多重基質アナログや酵素自殺基質も良い阻害剤となり得る。本研究では、これらを考慮して必須アミノ酸合成酵素を阻害することによって人畜に危害を及ぼさない植物生長制御活性物質、また、昆虫の生理学上重要なエステラ-ゼ類も標的としてその阻害剤、特に幼若ホルモンエステラ-ゼ阻害による昆虫生育制御剤を分子設計することを目的とした。 まず、トリプトファン合成酵素の基底状態アナログである数種の4ーメルカプトピリジンと2ーメルカプトベンツイミダゾ-ル類に阻害活性を認めた。それらの誘導体に若干の植物生長抑性活性を認めたが両活性の相関は低かった。一方、遷移状態アナログとしてジヒドロインド-ルの3位にアラニンを導入したところ強い植物生長抑制作用を見出した。トリプトファン合成酵素阻害活性とin vivoの植物に対する作用が必ずしも相関しない場合があり、これは浸透移行性や代謝が関係していると考えられる。 エステラ-ゼ阻害剤にはトリフロルメチルケトン誘導体を設計した。合成した数種化合物の中でpー(N,Nージイソプロピルメチル)トリフロルアセトフェノンに強いアセチルコリンエステラ-ゼ阻害活性が認められた。一方、三方両錘型五配位リン化合物数種を合成したが、弱い阻害活性しか認められなかった。
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