遷移状態アナログ酵素阻害物質の分子設計

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03660141
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 江藤 守総 九州大学, 農学部, 教授 (70038173)
• 研究分担者: 桑野 栄一 九州大学, 農学部, 助教授 (00108672)
• キーワード: 遷移状態アナログ / トリプトファン合成酵素 / トリフルオロ酢酸アミド / 1,5-二置換イミダゾール / 複素環チオール / ジヒドロインドール / 植物生長抑制 / 昆虫生育制御

研究概要

生物活性物質の探索にあたり、酵素阻害は一つの目標となる。その際、基質アナログより遷移状態アナログがはるかに有利である。なお活性中間体アナログ、多重基質アナログや酵素自殺基質も良い阻害剤となり得るので、これらも考慮して必須アミノ酸合成酵素を阻害することによって人畜に危害を及ぼさない植物生長制御活性物質、また、昆虫の生理学上重要なエステラーゼ類も標的としてその阻害剤、特に幼若ホルモンエステラーゼ阻害による昆虫生育制御剤を分子設計することを目的とした。
まず、トリプトファン合成酵素の遷移状態アナログとして3-置換ジヒドロインドールなどを設計して強い植物生長抑制作用を見出した。なお関連する1-置換ベンツイミダゾール類には酵素阻害活性が無かった。一方基底状態アナログである2-メルカプトベンツイミダゾール類に阻害活性を認めたので、種々の複素環チオール類を合成して、トリプトファン合成酵素の阻害活性と植物生長抑制作用を検討し、両活性間にある程度の相関を認めた。
エステラーゼ阻害剤には遷移状態アナログとしてトリフルオロメチルケトンあるいはトリフルオロ酢酸誘導体を設計した。幼若ホルモンエステラーゼ阻害剤として合成した化合物の中でN-(p-フェノキシフェノキシエチル)トリフルオロ酢酸アミド等にカイコ幼虫に対する変態阻止効果が認められた。一方、幼若ホルモン生合成あるいはジベレリン生合成に関与する酸素添加酵素チトクロームP450の阻害を目的に1,5-二置換イミダゾール類を設計しカイコ幼虫に対する早熟変態誘起活性物質や植物生長抑制物質などを得た。また多重基質アナログとして合成したS-(1-ナフチルメチル)グルタチオンにグルタチオン転移酵素のほかグリオキサラーゼ1に対する強い阻害活性が認められた。

研究成果

• [文献書誌] A.Hirashima & M.Eto: "Quantitative structure-activity studies of optically active 2-methoxy-1,3,2-oxazaphospholidine 2-sulfides against Musca domestica L." Pesticide Science. 34. 329-332 (1992)
• [文献書誌] A.Hirashima,Y.Yoshii&M.Eto: "Synthesis and octopaminergic agonist activity of 2-(substituted benzylamino)-2-thiazolines" Bioscience,Biotechnology and Biochemistry. 56. 1062-1065 (1992)
• [文献書誌] M.Iio,K.Sadakane,T.Shiotsuki & M.Eto: "Effects of substrate-(glutathione-) and inhibitor-(flavonoid-) analogues on glyozalase I activity" Bioscience,Biotechnology and Biochemistry. 56. 1461-1462 (1992)
• [文献書誌] A.Hirashima,Y.Yoshii & M.Eto: "Action of 2-arylaminothiazolidines on octopamine-sensitive adenylate cyclase in the American cockroach nerve cord and on the two-spotted spider mite" Pesticide Biochemistry and Physiology. 44. 101-107 (1992)
• [文献書誌] N.Yamada,E.Kuwano,M.Kikuchi & M.Eto: "Synthesis and bleaching activity of 1,5-disubstituted imidazoles" Bioscience,Biotechnology and Biochemistry. 56. 1943-1948 (1992)
• [文献書誌] A.Hirashima,Y.Yoshii & M.Eto: "The agonist action of substituted phenylethanolamines on octopamine receptors in cockroach ventral nerve cords" Comparative Biochemistry and Physiology. 103C. 321-325 (1992)