研究概要 |
本研究では、スギ疎密植栽地における密度各区ごとの雑草木群落とその動きの実態を生態学的な観点からとらえることをおもな目的とし、併せて群落の動きと育林・保育との関係についてふれた。 このため、房総南部の東京大学千葉演習林内にあるスギ疎密植栽地を主に使用し、各密度における造林木の成長状態、雑草木の組成と構造等についての経年変化を調べた。そして各密度・年次間での比較・検討を行った。 低密度(2,500本/ha植え)、中密度(3,906本/ha植え)及び高密度(6,944本/ha植え)の3区を設けたスギ幼齢疎密植栽地において、イネ科草本のススキは、各密度とも植栽後2〜5年目林地で優占植生となっていた。 ススキの草丈及び雑草木の群落高は、植栽後8年間の中で各年次とも密度間での差が明瞭でなかった。しかし雑草木の優占種、生活型組成等の年次変化では、密度間でのちがいが認められ、とくに高密度区での雑草木の動態にスギの密植うえによる影響が明瞭にあらわれていた。 被度の年次変化からみたススキは、低密度、中密度の両区ともスギ造林木の樹高が3m、被度が45%となる5年目以後に著しく減少した。他方、高密度区のススキは、造林木の樹高が2m、被度が30%となる3年目以後に急激に減少した。したがって、スギを密植うえにすると、スギの樹高及び被度の低い値の年次でススキが著しく減少することがわかった。すなわち、当幼齢林地では、スギ造林木の植栽密度を6,944本/ha植えまで高めると、植栽後3年目の早い年次からススキの被度を低下させ、下刈り回数を減らすことが可能であるとわかった。 なお、全調査結果から、当地域(房総清澄山地)のスギ造林地における雑草木群落の動態を植栽密度との関連の中で大まかであるがとらえることができた。
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