研究概要 |
大佐渡山地では,スギ林は海抜約700m以上の埴質な土壌母材の場所に,ヒバ林は海抜約700m以下のやや砂質な土壌母材の場所に分布していた。ブナ林は金北山周辺の高海抜地に分布が限られ,ほぼ純林状を呈していた。各林分での空中湿度は,スギ林が最も高く(生育期間の約1/2が湿度95%以上),ヒバ林が最も低く,ブナ林は中間であった。スギ林の土壌は湿性的な水分環境にあり,湿性鉄型ポドゾル(緩斜面)や乾性ポドゾル(斜面中腹〜尾根)が出現した。ヒバ林の土壌は乾性的な水分環境にあり,弱度の乾性ポドゾルが出現した。ブナ林では土壌母材や水分環境に特別な傾向がなく,褐色森林土や弱度に溶脱を受けた土壌が出現した。土壌中での遊離鉄や腐植の溶脱・集積は,スギ林では明瞭,ヒバ林では弱度,ブナ林ではきわめて弱度だった。土壌表層部(とくにA0層)の化学性は,ヒバ林ではCaを主とする塩基類が多く,塩基飽和度とpHが高かったが,窒素が少なく,C/N比が大きかった。ブナ林では塩基類が少なく,塩基飽和度とpHが低かったが,窒素が多く,C/N比が小さかった。スギ林の土壌は,養分的にはヒバ林とブナ林の中間であるが,ポドゾル化に伴う養分の移動・集積が認められた。 国仲平野の藤津川地区の水田から採取した試料の花粉分析より,以下の知見を得た。約1千5百年前〜1千年前には,ヨシなどのイネ科草本が広く分布し,周囲にはコナラ亜属に含まれる樹種を主とし,クリ,スギ,ブナなどが生育していた。約1千年前より水田雑草の構成種やソバの花粉が増加し,この時期から水田や畑地の拡大が起こり,そのために周辺のクリやスギの林が減少した。約5百年前から現在にかけて,イネ科花粉が増加傾向を示し,周囲の森林が開拓されて,マツを除く主要な樹種,とりわけブナが著しく減少した。表層部では,スギやコナラ亜属の花粉が再び増加しており,植林の影響や二次林の形成が示された。
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