冷温帯落葉広葉樹を対象に、光合成速度に及ぼす短期のCO_2濃度効果を個体レベルで検討することを目的とした。単葉レベルと異なり、個体レベルでは、個体全体としての反応を評価しうるものの、多量の空気を必要とし、CO_2濃度の調整に多くの時間が費やされ、繰返し実験の機会が狭められる欠点がある。 初年度は所定のCO_2濃度の空気を得るための機器の購入(サ-マル定流量装置、ミキサ-、ポ-タブル赤外線分析計、CO_2ボンベ、エアタンク他)、所定の大気湿度調整の準備(温湿度変換器、ク-ラ-ボックスと鋼パイプによる除湿部、恒温水槽)完了が予定を大幅に遅れ、8月末となった。加えて、10月始めからIRGAの故障で実験は完全にストップし、予備実験だけに止めざるを得なかったのは無念という以外ない。ブナ稚樹を用いた予備実験では、チエンバ-温度20℃、湿度60%、PPFD473.5uE・m^<ー2>・s^<ー1>で、CO_2濃度を0、100、200、300、400、500、700、及び1000ppm下の光一光合成曲線を求めた。得られた主な結果を次に要約する。 1)光飽和の光合成速度は、CO_2濃度の増加とともに急増し、400〜700ppmにピ-クのみられる好適曲線を示した。2)CO_2freeーair下でのR_L(光呼吸)は、光強度に関係なくほぼ一定(1.73umo1CO_2・m^<ー2>・s^<ー1>)で、暗呼吸(R_D)ま2倍以上である。3)好適CO_2濃度は、弱光下ほど高い傾向がみられた。4)CO_2C.P.は弱光下ほど高くなる。5)L.C.P.(光補償点)はCO_2濃度が高まる程低い。6)R_DはCO_2濃度が高まる程低くなる傾向がみられた。なお、400ppmCO_2までのヒメヤシャブシの予備実験では、光合成速度は各CO _2レベルともブナの2倍かそれ以上で、さらに300ppm以上では473.5uE・m^<ー2>・s^<ー1>でも光飽和に達せず、CO_2freeーair下のR_Lも3.16umo1CO_2・m^<ー2>・s^<ー1>と300ppm下のR_Dの2倍以上で、しかもブナのR_Lの約2倍であった。
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