本年度は次の二つの課題について検討した。 (1)ミズナラ、カシワ、タニウツギの個葉の光合成特性におよぼす短期のCO_2効果:定温、定湿度下でCO_2レベル0、175、350、600、900ppmの詳細な光一光合成曲線を求めた結果、高CO_2下ほど光合成速度は高まり、飽和CO_2濃度はミズナラ、カシワ900ppm以上、タニウツギが600ppmにみられた。いずれも、弱光域からCO_2効果がみられ、光化学反応とCO_2拡散過程の両者に関与していることが判った。暗呼吸速度、光補償点へのCO_2効果は少なかった。Kok効果とみかけの光呼吸も確認できた。蒸散では3種とも低CO_2下で高く、高CO_2下ほど低下した。結果として、水利用効率はいずれもCO_2レベルの高い程高まった。気孔コンダクタンスはOppm下では光の増加とともに急減安定し、それ以上のCO_2下では光強度に比例し、高CO_2下ほど低下した。気孔コンダクタンス当りの光合成速度はいずれもCO_2濃度の増すほど急増した。 (2)CO_2濃度と水ストレスがヤシャブシ稚樹の光合成と気孔の反応特性におよぼす効果:定温、定湿度、定照度下で、CO_2濃度は3段階(350、600、900ppm)のもとで、ヤシャブシ稚樹の水分状態を水ポテンシャルで-2〜-15barに変化させて、光合成特性をしらべた。その結果、水ストレスの増すにつれ、光合成、蒸散、気孔コンダクタンスは低下し、限界水ポテンシャルは-12、-10、-8barと差がみられた。光合成に対するCO_2濃度効果は、-8bar以下の水ストレスの比較的弱い状況下で顕著にみられ高CO_2下程増加した。蒸散では効果は少なかったが、気孔コンダクタンスでは-6bar以下でかなり認められ、高CO_2下程低下した。 気孔コンダクタンス-光合成関係では、高CO_2下程コンダクタンスは低下し、光合成は高まったが、水ストレスの増すほど、両者共、漸減後、急減した。水利用効率は高CO_2下程高く、ピークは-8barにみられた。
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