森林における風致・景観条件を客観的に計量評価するためには、まず景観構成要素や属性を尺度化して判別し、それに基づいて被視条件としての森林空間を模擬的にモデリングすることが必要である。しかし、森林景観条件には、見る者の個人差(主観性や選好性)に加えて、森林自体の時間的変化(四季などの短期的変化)、保育作業や更新・伐採法などの管理目標の違いによる中・長期的変化等、いくつかの不確定性要因が含まれる。 そこで、当核年度は本研究課題の基礎部分を解明するために、まず施業法や利用形態を異にするいくつかの森林タイプをテストケ-スとして設定し、景観写真を用いた被視選好度のイメ-ジ分析(中・遠景対象の多様度・敏感度)、現地調査に基づく森林内景観構成要素分析(近景評価)により検討した。景観写真のイメ-ジ分析においては、不確実性対象達観判定法として開発されたデルファイ法を応用し、被視条件要素の抽出と選好度がデルファイ図によりスム-ズに行なえることを示した。その結果、中・遠景条件として、稜線の重なり度、フラクタル形状、景観空間の奥行き、構造物・水系・伐区の有無が大きく影響することが判明した。一方、ヒエラルヒ-法(AHP)を応用した森林内景観要素評価(照度、微地形、植生、音響、広がり)の結果は、選好要素として林内照度、植生構造が特に重要となることがわかった。またこの場合にも、林内外の水糸の有無がその判断に強く影響を与える。これらの各要素間の相互関係を総括的に表現する手法として、景観レ-ダチャ-ト図を提案導入した。 以上の基礎部分の研究成果に基づいて、グラフィックシミュレ-ションによる伐出作業領域での森林景観のモデリング他について、目下研究は進行中であり、DTMによる被視領域の自動判定、路網や伐区形状の重ね合せによる森林表現の自動図化等、一部ソフトは完成している。次年度は、これをさらに発展させ、その応用性を高める。
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