電算機とその周辺機器の普及に伴い、グラフィック技法を導入した様々な景観解析法が提案され、収穫作業と連係した森林景観計画へもその応用が広がっている。前年度までの研究で森林景観の被視条件として、傾斜、可視領域・頻度、陰影分布、水系等が重要な因子となることを明らかにし、伐出作業計画立案に対してどのように反映出来るかを探った。 本年度は、具体的なモデル地域を設定し、これらの被視条件を考慮した伐出作業領域での森林景観のシミュレーションを試みた。モデル地域の景観像を創出するため、ここでは二つの表現方式を比較した。一つは、数値地形・林相図から3次元的な立体森林景観をディスプレイ上に出力させる方式で、他は、プロッタを用いてワイヤーフレームの地形上に、森林をシンボルマークで描画する方式である。被視条件を考慮した路線や伐区、架線・土場位置をこれらの森林モデル上に重ね合わせて、景観像を作り上げた。その結果、ディスプレイ方式は、起伏変化に対応した森林の立体構造が認知しやすく、路線や伐区形状を変化させながら検討する場合のような、対話型の中間解析に効果的であった。問題点は、森林の写実性に欠けることである。一方、プロッタ方式は、樹木の疑似的描画により森林景観のイメージをかなり高め、路綱や伐区の表現も良好であった。ただし、解析途中の処理・出力が不可能であり、線画出力に時間がかかるという問題点が指摘された。 伐出作業空間の森林景観モデルとしては、いずれの出力処理方式においても、その表現性や写実性という点で検討の余地を残している。しかしながら、収穫作業計画と森林景観計画を同一な軸で評価するという基礎段階として、今回の研究は有効なものであると考えられた。
|