森林生態系の養分循環の機構解明において、地下部での細根の現存量、成長量、枯死量などからの細根動態の重要性が指摘されている。本研究は、ヒノキ人工林における細根動態の解明を目的として行われた。野外研究は40年生のヒノキ人工林において行われた。調査地において3年間にわたり細根の現存量の測定を行った。研究期間の3年間に以下の項目を検討し、最終年度に調査結果のまとめを行い、ヒノキ人工林での細根動態の様式を明らかにした。 1.細根測定の方法論の検討 地下部分の細根を定量的に推定するための方法論の検討を行った。細根は、土壌の表層に分布しており、地点間での分布は比較的均一であった。この結果をもとにして、調査地内から断面積25cm^2で深さ24cmの土壌コアーを採集し、洗い流し方により細根の現存量を測定した。この結果は、今吉、武田、岩坪(1991)年に示した。 2.細根の現存量の季節変化 ヒノキ人工林において、細根の現存量の変化を3年間にわたり測定した。細根の現存量は、季節的な変化、年次的な変化を示した。2年間での細根現存量の測定値から、現存量の平均は3.9トン/haと推定された。 3.細根の回転速度の推定 細根は、地上部の葉のように成長の様式を観察できないので、間接的な方法により細根の回転速度を推定した。細根の回転速度は、現存量、枯死量、生長量から推定できる。細根の枯死量は、リターバックに細根をいれて時間に伴う重量から推定した。 以上の野外でのヒノキ細根の現存量、分解量測定の結果をもとにして、ヒノキ細根の純生産量、土壌への細根有機物量の供給量、細根の回転速度を推定した。
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