研究概要 |
樹木のさし木発根をさし穂の樹体内水分状態,光合成速度などの面から追求しているものである。実験材料として高知大学演習林に植栽されている,鹿児島県から秋田県に生育する10産地のスギ10年生品種,クロ-ンを用いてさしつけを行い,実験材料とした。その結果,1).品種,クロ-ンによって発根率,枯死率,生在率はかなり違いがみられた。2).日の出前に測定したさし木の木部圧ポテンシャル(XPP)は発根している個体では0〜-5バ-ル内のものが半数を占め,カルス形成個体では1割発根もカルスもみられない個体では極めて少なかった。逆にXPPが低くなると未発根及び未カルス形成個体の占める割合が多くなった。3).一方, さし木親木のXPPは春から秋にかけて-6〜0バ-ルの範囲内で変動が少なかった。スギ林内の地表面下30cmにおける土壌水分の動きは降雨後1日もすればPF値が1.8に低下するが乾燥が続けば2.8〜2.9に達した。4).さし木発根率と光合成速度の関係では発根している個体では光合成速度が20×10^<-3>μ molーg^<-1>,S^<-1>以上の割合が2割強,カルス形成個体では5%,発根もなく,カルスも形成していない個体ではわずかであった。0〜10×10^<-3>の範囲内では大部分が未発根であり,カルス形成個体は8割,発根個体は5割弱にすぎなかった。カルス形成と発根の関係は種によっていろいろであるが,スギでは両者には直接関係はないとされている。しかし,カルス形成は少なくともさし木の活力維持などには役立ち,光合成活動が無発根,無カルス形成個体に比べ高いのはこのためであろうと推察される。5)いくつかの広葉樹の発根個体では発根スギと同じような高い光合成速度を示し,光合成速度の日変化にいくつかの型がみられた。すなわち,(1)午前中に高い値に達した後,増減をしながら漸減する型,(2)日中低下がみられたものの午後には再び高い値を示すもの,(3)日中低下せず,ほぼ一定の値を保つ型である。
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