研究概要 |
さし木の水分生理状態をさし木親木と比較しながら木部圧ポテンシャル(以下XPP)、含水率などにより検討した。実験は農学部構内の採穂園に生育する県内産スギ精英樹12クローン及び広葉樹を多数用いたが,広葉樹の大部分が実験中枯死したため最終的に使用できたのはウツギ,サザンカ,サンゴジュに留まった。1992年3月,自動噴霧装置の下で通常のさしつけ方法によりさし木を行った。XPPの測定は午前11時から午後1時の間に,さしつけの3月から掘り取りの12月まで行った。その結果1).スギさし木の含水率は100〜200%で,4,5月よりも10月,12月でいくぶん多い傾向がみられた。親木の含水率は150〜300%でさし木に比べて高く,10月よりも5,8月で高くなった。2).さし木のXPPは-20〜-5barの範囲内で,4,5月よりも10,12月と高くなる傾向がみられた。親木のXPPは-13〜-5barで,10月よりも5,8月でいくらか高くなったが,さし木のように時期による違いは明らかでなかった。3)含水率とXPPの関係ではさし木の場合,10,12月にXPPが高くなるのは根系の発達が促進され,水分要求量は春先に比べ低くなると考えられた。親木では根系は十分発達しているので,XPPは高く時期による変動幅も少ないようであった。4)スギ親木のXPPの3月から8月までの変動値と発根率の関係は変動値があまり下らなかったクローンほど高い発根率がみられた。これは蒸散量が増え,水ストレスが起りやすい夏に春からの水分状態がよいクローンに発根率が高いと考えられた。さし木のXPPの8〜12月までの変動値と発根率は8月から12月までにXPPが回復したクローンほど発根率が高い傾向を示した。5)広葉樹の含水率,XPPの日変化はスギクローンとほぼ同じような経過がみられた。すなわち,XPPの日変化は夜明け前に最も高く,正午頃最低となり,日入時高くなった。とくにサンゴジュでは含水率とXPPの変動がよく類似した。
|