都市内樹林地は一般的には好ましいものと評価されるが、樹林地に隣接して生活する住民は、日照、落葉落枝、風紀上の不安などの諸問題を訴えており、特に自治体が土地を取得した後の緑地保全地区などについては、周辺の立地や樹林の質に応じた適切な管理が必要である。 1)緑地保全地区および条例による類似の地区指定制度は、緑地保全のために有効な制度ではあるが、運用のための財源、宅地化された環境での現状凍結的な保存の可否、買入れ後の緑地の公有地としての利活用など多くの問題を抱えている。 2)多くの市民が都市に緑を残すことは必要と感じているが、樹林や大木に隣接して住む者は日照や落葉の害のほか、台風時の倒木や枝の落下を恐れている。都市内の大木には衰弱しているものが多いので、衰弱木への対策や、保存樹としての価値にどこで見切りをつけるか等、管理上の問題で検討すべき点が多い。 3)保存樹は、文化財保護法による指定物件とは違って、目的が都市の美観風致の維特にあり健全で樹容が美観上特にすぐれていることを条件としている。樹高、幹周などの指定基準は樹種にかかわりなく一律に定めてあるが、樹種によってはこの基準に達しなくともすぐれた樹容を呈するものがあるはずだし、美観風致上の価値は周辺の環境の質によっても違うはずである。文字どおりの美観風致の維持に資する指定や解除を効率よく行なうためには、樹種や立地ごとに指定基準に幅をもたせて指定すること、価値基準の項目を明らかにしそれぞれにランク付けをすることなどを検討する必要と思われる。 4)全国72都市を対象としたアンケート調査の結果によれば、保存樹の所有者に対して自治体が行う助成や支援の制度は、定額補助金の交付、作業費に応じた補助金の交付、行政による作業代行など7つに類別することができる。緑地や保存樹の保全施策はどの自治体も課題を抱えており、都市の実情に応じて独自の工夫が見られる。
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