本研究は、バクテリアによる木材の劣化・分解がどの様に行われているのかを木材分析の手法によって明らかにすること、組織の違いや樹種の違いによって分解性が異なることの原因の一つが、含有化学成分に由来するものと考え、この因子を相違を明らかにすること、バクテリアに対する劣化耐性がよくかつ摩耗耐性のよい木質材料を選別することなどを目的として行われた。 バクテリアの木材分解の速度は、担子菌の木材分解の速度に比べて決して速くない。しかし、木粉を撹はん下、バクテリアを培養すると、その分解速度は増加することを見いだした。このことは、好気性の人工条件下では木材の酸化分解が促進されていることを示し、天然状態のような嫌気条件下での分解とは異なった状況にあることを示す。 好気性条件下では、嫌気性条件下でよりもバクテリアによる有機体の分解が促進され、加えて、添加有機物由来の臭気の発生が低くなった。 この好気性バクテリアの作用により、木粉中の熱水抽出物や、Klasonリグニン量が増加し、一方、ホロセルロース量は減少した。このことはバクテリアによる木材分解能力は、主に炭水化物に対して働いている事が示唆される。 木粉の粒子の違いによって、空隙率、保水性、水通導性に大きな相違があること、異なる粒度の木粉の組合せにより、空隙率を大きく変える事なく、高い保水性および水通導性をもつ混合体を作る事が可能となるなどの新しい事実が明らかになった。 材からの熱水抽出物、冷水抽出物のバクテリアの繁殖に及ぼす影響を調べた。ヒノキの抽出物は熱・冷水抽出物ともにバクテリアの繁殖を抑制する効果があるが、トドマツ、カラマツ熱水抽出物などはむしろ促進する効果が見られた。
|