本研究は、(1)偏性好気性バクテリアによる木材の劣化・分解がどの様に行われているのか、(2)組織の違いや樹種の違いによって分解性が異なることの原因を明らかにすること、(3)バクテリアに対する劣化耐性がよくかつ摩耗耐性のよい木質材料を選別することを目的として行われた。 その結果、次の事が明らかとなった。 1、好気性条件下では、嫌気性条件下でよりもバクテリアによる非リグノセルロース系生体高分子有機体の分解が促進され、加えて、添加有機物由来の臭気の発生が低くなった。 2、好気性バクテリアの作用により、オガ屑中の熱水抽出物量が増加し、ホロセルロース量は減少した。Klasonリグニン量に大きな変化はなかった。このことにより、バクテリアによる木材成分の分解は、主に炭水化物に対して働いている事が示唆された。 3、オガ屑粒子の大きさの違いによって、空隙率、保水性、水通導性に大きな相違があること、異なる粒度のオガ屑の組合せにより、空隙率を大きく変える事なく、高い保水性および水通導性をもつ混合体を作る事が可能となるなどの新しい事実が明らかになった。 4、オガ屑の摩耗耐性は樹種によって異なっており、また粒度によっても異なっていた。粒度の大きい部分でカラマツの耐性が大きく、粒度の小さい部分でスギの耐性が大きかった。 5、オガ屑からの温水抽出物、冷水抽出物のバクテリアの繁殖に及ぼす影響を調べた。ヒノキの抽出物は温・冷水抽出物ともにバクテリアの繁殖を抑制し、抗菌性成分の存在が示唆された。トドマツ、カラマツ熱水抽出物はなどむしろ促進する効果が見られた。菌の増殖仰制・促進は栄養条件とも密接に関係し、複雑な相互関係がある。
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