研究概要 |
本研究では木材中の超音波の伝播速度が水分の減少で増加する性質を利用して、水分傾斜のある木材の含水率測定についての基礎的な検討を行なった。得られた成果の概要は以下の通りである。 1.伝播速度に及ぼすいくつかの測定因子について:木材の中に結合剤が入るのを防ぎ、探触子と木材表面の接触をよくするには木材表面に粘着テープを貼り、その上に白色ワセリンを塗布する方法が簡便でよい方法であった。50-5000KHzの周波数範囲では、繊維、接線および半径方向の伝播速度に及ぼす周波数の影響は見られなかった。2.伝播速度に及ぼす水分傾斜(分布)の影響:超音波の伝播方向に水分傾斜がある場合には、複合則がほぼ成立した。伝播方向と平行方向に水分傾斜がある場合には、伝播速度の大きい部分の影響が非常に大きかった。3.乾燥過程における木材中の伝播速度と含水率との関係:繊維飽和点以下では、伝播速度は含水率の低下で増大した。含水率の単位変化当たりの伝播速度の変化割合は繊維方向が半径方向より大きかった。飽湿状態からの乾燥過程における伝播速度(V)-含水率(u)曲線の形は樹種によらずほとんど同じであった。飽水状態からの乾燥過程における伝播速度(V)-含水率(u)曲線の形は樹種グループによって異なり、大きく3つのグループに分けられた。乾燥過程における木材を含水率の異なる材が組合わさった複合材と考えて、複合則を適用した結果、計算値と測定値はよく一致した。4.伝播速度に及ぼす繊維傾斜角の影響:LR,LT面における伝播速度の繊維傾斜角に対する変化は針葉樹材、広葉樹材ともヤング率の傾向と類似であったが、RT面では針葉樹材と広葉樹材で傾向を異にした。5.伝播速度と比重の関係:繊維方向の伝播速度は比重と正の相関を示すグループ、負の相関を示すグループ及び相関を示さないグループに分けられたが、これには樹種のヤング率と比重の関係が関与している。
|