研究概要 |
天然セルロ-スの2相性をより簡便に見分ける方法についてX線ディフラクトメトリ-法により検討した。即ち2相の量比が異なることが明らかな高結晶性セルロ-スを数多く選出し,それらから粉末試料を調製した。これをペレットに成形して,対称透過法によって,2θ=5°から40°までの回折強度曲線を求めた。次ぎに回折曲線上に現われたすべての回折ピ-クのピ-ク位置を最小二乗法のラインシェイプ解析によって求め,面間隔を計算した。測定したセルロ-ス種すべての面間隔デ-タをもとに,主因子分析,判別分析を行なった結果,特定の回折点のピ-ク位置を調べることから,Iα(三斜晶)ーrichなAlgalーBacterial型とIβ(単斜晶)ーrichなCottonーRamie型とを識別できることを見いだした。言い換えれば,IR,固体 ^<13>CーNMR,電子線回折に加えて4番目の,2相性を支持する実験事実を見いだした。 一方,結晶構造解析にはどうしても高結晶性でかつ高配向の試料が必要である。そのために,結晶性の良いバロニアやホヤを微結晶とし,これを強磁場により再配向させることを試みた。それには,まずセルロ-ス試料を硫酸加水分解によって、液晶状の懸濁液とした。この懸濁液は偏光下で観察したときに、著しい複屈折を示した。これを磁場内に置くと複屈折が変化し,その変化の様子から,微結晶の繊維軸が磁場に垂直に配向していることがわかった。以上の強磁場での配向実験は、特別な装置を必要とすることもあってあまり数をこなすことができなかった(強磁場の実験は、グルノ-ブルにあるマックスプランク、強磁場研究所のMaret博士との共同研究である)が,セルロ-スの材料としての新しい利用法を示唆する興味深い成果である。
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