研究課題/領域番号 |
03660163
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
杉山 淳司 東京大学, 農学部, 助手 (40183842)
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研究分担者 |
岡野 健 東京大学, 農学部, 教授 (30011927)
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キーワード | 三斜晶 / 単斜晶 / 天然セルロース / 固体^<13>CNMR / 電子回折 / X線回折 / セルロースIα / セルロースIβ |
研究概要 |
天然セルロースが三斜晶と単斜晶の混晶であるとするモデルに基づき、海藻から木材に至るさまざまな起源のセルロースを、三斜晶を多く含む海藻・バクテリア型と単斜晶がほとんどであるコットン・ラミー型に分類することを試みた。すなわち、12種類の高結晶性セルロースの精製試料について、X線ディフラクトメトリーにより面間隔を精密測定した後、三斜晶を単斜晶に転移させる熱処理を行い、再び面間隔を測定した。処理前後の面間隔値から統計解析を行ったところ、処理前のセルロース試料は、三斜晶のIα相を多く含む海藻・バクテリア型と単斜晶のIβ相がほとんどであるコットン・ラミー型に分類されたが、熱処理後は両者の差がなく、全てコットン・ラミー型に分類された。この結果を踏まえ、面間隔の値から、海藻・バクテリア型とコットン・ラミー型を判別する式を得た。この判別式に未精製木材の面間隔の値を代入したところ、およそ1/3の木材が海藻・バクテリア型に分類された。ところが、ホロセルロースとして、面間隔を再び測定し、先の判別式に当てはめたところ、すべてがコットン・ラミー型に判別された。これより、木材中の準結晶あるいは非晶成分は、X線回折のピーク位置をシフトさせると考えた。非結晶性物質の影響をさらに調べるため、広葉樹あて材と正常材を試料に選び、固体^<13>CNMR、FT-IR、制限視野電子回折、X線回折の4方法で比較検討した。その結果、固体^<13>CNMRのみで、正常材のセルロースにIα成分の存在が示唆された。しかし、FT-IR、制限視野電子回折、X線回折からは、Iα成分は認められなかった。以上より、木材セルロースの結晶成分は木化、未木化壁を問わず単斜晶であり、個体^<13>CNMRで認められるIα成分は三斜晶というより乱れた構造であり、恐らく他の壁成分と相互に作用していることが予想された。
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