研究概要 |
ラワンと針葉樹材を原料として製造された市販の構造用パ-ティクルボ-ドを10×5cmに切断し,土壌中や地表面に約2ヵ月間設置したのち菌類の分離を行い,約20株の菌類を得た。これらの中で比較的分離頻度の高いtrichodermaやPenicillium属5株を含む分離菌8株と木材腐朽菌6種(褐色腐朽菌と白色腐朽菌各3種)を用いて,ボ-ド及び素材(ブナ・スギ辺材)の腐朽実験を行った。供試分離菌類はボ-ドや素材の表面で生育したが,1株を除いて全て素材に質量減少を生ぜず,木材利用上表面汚染菌あるいは変色菌に分類されるものと考えられる。一方,木材腐朽菌は1種を除いて素材に比較的大きな質量減少を生じた。ボ-ドの場合,全ての供試菌類は低い貭量減少しか生じなかったが,その中で白色腐朽菌が最大の質量減少を生じた。 ボ-ドの場合,素材と異なり質量減少が生じなくても強度低下が生ずる可能性がある。そこでボ-ドの剥離強度に及ぼす供試分離菌類の影響を調べた。実験は水分による膨潤の影響を避けるためボ-ドの両面にヒノキ心材の添え木をあて,ビニ-ル巻針金で縛ることにより実施した。供試分離菌類の多くは明らかにボ-ドに強度低下を生じた。 次に,強度低下の原因が木部の劣化によるものか否かを調べるため,腐朽後のボ-ドより木片を取り出し,過酢酸で解繊し,偏光顕徴鏡観察を行った。供試分離菌1株は木材細胞壁中に典型的な軟腐朽空洞を生じた。しかし,他は明瞭な分解跡を生じなかった。 以上より現段階で得られた結論は,以下のとおりである。(1)ボ-ドと素材,特に建築材料では腐朽のタイプが異なる。(2)表面汚染菌類は質量減少を生じなくともボ-ドに強度低下を生ずる。(3)強度低下の原因は木部の劣化ではない。
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