研究概要 |
(1)縮合型タンニンの構造解析 樹令190年のシベリア産カラマツの内・外樹皮の遂次抽出物のフエノール特性を,ワットルおよびケブラコ・タンニンと比較検討した。その結果,両樹皮の各抽出区分の分子量は類似していたが、外樹皮の抽出率は内樹皮の2倍程度(約23%)であり、またフラバノール含有量/フェノール含有量は0.5以上であることを認めた。また、外樹皮のB・環構成核は、内樹皮と同様でありその初期構造を保持しているが、A・環を構成するフェノール核の変性度は内樹皮に比べて極めて大であった。 (2)モデル物質によるフェノール化・核交換反応機構の解明 単量体モデルを用い、BF_3触媒存在下でのフェノール化挙動を追跡し、3種類の主要反応生成物の構造を決定した。これらの結果から、フェノール化および核交換反応機構について論及し、縮合型タンニンの酸性触媒下におけるフェノール化によって、高分子タンニン質の低分子化および複素環開裂型のフェノール化付加物が得られる可能性のあることを認めた。なお、複素環の開環フェノール化物は、屈曲性と均質な反応性に優れていると推定し得るが、その生成条件は極めて緩和であることを見出し、縮合型タンニンの変性条件選定に対して貴重な示唆を与へた。 (3)縮合型タンニンの化学修飾 前年度の結果から、適正なタンニン試料のフェノール化修飾条件、即ち構成核の遊離が比較的少なく、複素環の開裂に必要なフェノール化度が期待できる条件として、レゾルシノール媒体配合量100g/100g、硫酸触媒添加量0.05mol/100gおよび120°C-2h反応の諸条件を決定した。また、非水糸、水系の相違が反応速度に影響すること、およびフェノール化物のイオン化および求核反応速度な原試料に比べ、著るしく改善されていることを予備的に認めた。
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