研究概要 |
中質繊維板(MDF)の性能を高める方法として気相での化学処理を行い,寸法安定性,吸湿性,振動特性,耐朽性,耐蟻性の観点から性能評価を行った.MDFは通常,乾式で製造されることや通気性が高いことを考慮すると,気相処理が不可避であり,その方法としてはホルマ-ル化が最適と考え,最近,報告者らが木材に適用して好結果を得ている方法をこれに適用した.処理および寸法安定性,吸湿性,振動特性の測定は研究代表者の湊が担当した.寸法安定性に関しては,いわゆる抗膨潤能は60%程度にとどまるが,いったん水浸せきや煮沸処理など,過酷な膨潤処理を行った後に乾燥した時の厚さの回復率がきわめて高く,無処理ではスプリングバックによる大きい永久変形が残るのに対して,ホルマ-ル化処理した場合には永久変形は全く残らなかった(回復率100%).吸湿性については現在も測定中であるが,ほぼ全相対湿度域において,処理試料の平衡含水率は無処理のそれの約40%にまで低下した.吸湿性の低下は,内装材などに用いた場合,壁面などの防かび性の点からメリットになると考えられる.振動特性に関しては,処理により最大で約10%比較的ヤング率の増大と,約30%の損失正接の低下が認められ,スピ-カ-ボックスなどの音響材料としての用途にも興味ある結果が得られた. 耐朽性,耐蟻性試験は共同研究者の今村がおもに担当した.ホルマ-ル化MDFはカワラタケによる腐朽に対して大きい効果を持ち,また,イエシロアリおよびヤマトシロアリに対しても有効であった.これら生物劣化に対する抵抗性は床材など高湿度下での使用にも耐えられるものと考えられる. 現在,メ-カ-の協力を得て,大型の処理装置の試作および,これを用いた処理時間の短縮化を試みており,上記の性能が10数分の処理で得られている.また,遊離ホルムアルデヒドの除去についても検討中である.
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