シロアリと微生物との関係には、共生、寄生あるいは病原性などが考えられるが、イエシロアリと後腸内に存在する原生動物とは共生関係にあることが知られ、3種の原生動物が木材消化に深く関連しているとされている。このことを反映して、イエシロアリの生理にも原生動物が関与していることは明白であり、当然のことではあるがメタンや二酸化炭素などのガス生成への影響も想定される。そこで、 (1)先ず、原生動物数のコロニ-間の違いや原生動物の種類によって後腸内での存在部位が限定されていることを、実験室飼育コロニ-及び野外コロニ-から採集したイエシロアリの職蟻について明らかにした。 (2)次いで、ガス採取装置付閉鎖系シロアリ飼育室を設計・試作し、改良を加えながら設営した。この飼育室を利用して3カ月にわたる人工飼育を行ったところ、イエシロアリの木材食量活動や原生動物数などに変化を生じることはなく、一定温度下での恒常的な人工飼育が可能になった。このことによって、今後の研究、とくに、種々の前処理を施したイエシロアリを用いてのガス生成量測定に応用できるようになった。 (3)また、分析用ガスの採取方法やガス分析の方法についても検討してきており、ガスクロマトグラフによるガス分析の基本的方法をすでに確立した。 (4)野外でのガス生成量の測定に関しては、イエシロアリが土中に営巣するため、ガスの的確な採取が困難であるとの結論に達した。そのため、日本には存在しない地上にシロアリ塚を繁造するシロアリ種を研究対象にする必要があり、将来的には、海外との共同研究を考慮すべきであろう。
|