生態系改変におけるシロアリの役割

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03660174
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 角田 邦夫 京都大学, 木質科学研究所・木質料機能部門, 助教授 (30127104)
• 研究分担者: 吉村 剛 京都大学, 木質科学研究所・木質材料機能部門, 助手 (40230809)
• キーワード: シロアリ / メタン生成 / 腸内共生原生動物 / 温室効果 / 生態系改変

研究概要

イエシロアリ後腸内に存在する3種の共生原生動物の分布(局在性)の季節的変動を、複数の実験室飼育コロニーと野外コロニーについて検討した。また、木材摂食活性についても検討し次の知見を得た。 *イエシロアリ共生原生動物の分布は季節的変動が認められず、数的変動も季節的な特徴を示さないことが実験室飼育と野外コロニーに関係なく認められた。 *木材摂食活動は、冬期よりも夏〜秋期の方が高かった。 *原生動物の分布(局在性)と存在数については、(1)最大型種であるPseudotrichonympha grassii Koidzumiは後腸前部に偏在し、存在数は最少であった。(2)中型種のHolomastigotoides hartmanni Koidzumiは、後腸内全域に均一に分布し、存在数はP.grassiiよりも多かった,(3)最小型のSpirotrichonympha leidyi Koidzumiは後腸後部に偏在し、存在数は最大であった,(4)実験室飼育コロニーと野外コロニーとの比較では、大型と中型の原生動物数が著しく少なく、木材食下量も同様に少ないことが野外コロニーについて観察された。
シロアリのメタン生成測定に関しては、供試シロアリ数や実験容器サイズの影響をイエシロアリを用いて考察した。大型容器では30頭以上、小型容器では5頭以上を同時に供試することが測定誤差を少なくする上で肝要であった。イエシロアリ職蟻は容器の大小に関係なく測定開始後72時間は定常的にメタンを生成し、その速度は、1頭1時間当り0.7〜0.8nmolであった。兵蟻のメタン生成への寄与はごく僅少であることも確かめられた。全地球的規模でのメタン生成量に占めるシロアリの割合は、地球上の生存する全シロアリ数の推定には不確定要素が多く、明確な数値を示すことは困難であるが、地球環境への影響を無視できないメタン量をシロアリが生産していることは疑う余地がないと言えよう。

研究成果

• [文献書誌] T.Yoshimura,K.Tsunoda,and M.Takahashi: "Distribution of the symbiotic Protozow in the nindgut of coptotermes formosanus Shiraki (Isopkra:Rhinotermitidae)" Jpn.J,Enriron.Entomol.Zool.4. 115-120 (1992)
• [文献書誌] K.Tsunoda and M.Takahashi: "Termiticidal efficacy of syrthetic Pyrethroids(I)Laboratory evaluation of cyhalothmin and lamda-cyhakthris as termiticides." Jpn.J.Environ.Entomol.Zool.4. 173-179 (1992)
• [文献書誌] T.Yoshimura,J.Azuma,K.Tsunoda and M.Takahashi: "Cellulose me tabolism of the symbiofic protozoa in termik,coptotermes-Formosanus Shiooki(Isoptera:Phinotermtidel)I.Effect of deglee of Polymerization of cellulose" Mokuzai Gakkaishi. 39. 221-226 (1993)
• [文献書誌] T.Yoshimura,J.Azuma,K.Tsunoda and M.Takahashi: "Cellulose metabolism of the symbiotic protozoa in tirmire,Coptotermes formosarxis Shiraki (Isoptera:Rhinoter mitidae)II.Sele chive defaunafion of protozoa and its effeat on cellulace metabolism." Mokuzai Gakkaishi. 39. 227-230 (1993)
• [文献書誌] K.Tsunoda,W.ohmuta,T.Yoshimara,and M.Tokoro: "Methane emission by the termire,coptotermes formosanees shiraki (ISOpfera:Rhinotermifidae)I. Effects of tefmik caste,population size and volume of fesfcon tainers" Wood Research. 79. 34-40 (1993)