生態系改変におけるシロアリの役割を考察するために、イエシロアリ職蟻を実験動物としてメタン生成量測定方法の確立、イエシロアリ職蟻あるいは兵蟻のメタン生成量測定メタン生成量の経時的変化、イエシロアリ後腸内の共生原生動物の分布(Localization)や生存数の季節的消長などを実験室コロニーと野外コロニーを用いて研究した。 シロアリに起因するメタン生成量測定は、気中でのメタン濃度測定と同様に、検出器として水素炎イオン検出器を装着したガスクロマトグラフによって可能であった。イエシロアリ職蟻の場合、メタン生成量の測定開始後72時間位は比較的一定の速度でメタンを生産することが経時的側定から明らかになった。その間のメタン生成速度は、1頭1時間当り0.7〜0.8nmolであった。 イエシロアリ後腸内に存在する3種の共生原生動物は、季節に関係なく種類によって後腸内の特定部位に局在することが観察された。原生動物の局在化が木材多糖類の消化に関係することが木材摂食活性との関係から示唆されたが、各々の役割についての確実な説明は不可能であった。原生動物数の季節による変動は、実験室飼育コロニーでも野外コロニーでも明確には認められなかった。 シロアリが地球大気中のメタン濃度の上昇に影響を与え、地球の温暖化に関与していること、自然界での植物質の分解を促進していることが今回の研究でも質的に証明できたが、生態系改変へのシロアリの影響を量的に推定する上での碓度を高めるには、より多くのシロアリ種を対象に同様の研究を継続する必要がある。
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