兵庫県一宮町の4戸のシイタケ生産者より、植菌後約1年半経過したシイタケほだ木(コナラ原木に品種「菌興514号」を接種)を計60本入手した。これらほだ木の形質と子実体発生能力との関係について調査したところ、発生量が多いほだ木は材の腐朽が進み、グルコサミン含量が多く、辺材の遊離アミノ酸含量が多い、などの傾向を認めた。 つぎに、鳥取県で伐採した同一条件のコナラ原木に品種「菌興115号」および「菌興610号」を接種し、岩手、和歌山、奈良、兵庫、および鳥取の各県下の林内に両品種とも40本ずつ移動し、約14ヶ月間(610号)あるいは19ヶ月間(115号)ほだ木育成をおこなった。これらほだ木を鳥取市に持ち帰り、それぞれ2回の浸水処理をおこなって子実体を発生させるとともに、ほだ木形質と子実体収量との関係を解析した。 ほだ木育成期間の長い115号では、初回の浸水発生までの子実体収量は温暖な和歌山県で育成したほだ木が最も多く、気温の低い岩手県のものが最少であった。しかし、2回目の浸水による子実体発生量では地域差は僅少となった。ほだ木育成地の気象との相関分析の結果、ほだ木育成による重量減少率(材腐朽度)はほだ木育成中の積算温度と正の相関があり、降水量とには有意相関がみられなかった。一方、ほだ木育成期間の短い610号では、初回浸水による子実体発生量に有意な地域差は認められなかった。 全ほだ木を対象にして相関回帰分析をおこなうと、両品種とも、子実体発生量に対し、外樹皮厚は負の相関を、ほだ木重量減少率は正の相関を示した。また、115号では、浸水時のほだ木吸水量や内樹皮厚も子実体発生量と正の相関があった。
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