全般に養殖業は成熟期をむかえ、過剰供給が支配する。国内生産のみならず、全世界の養殖生産物が日本市場をターゲットに殺到している。価格低迷により養殖経営は厳しい局面にたたされているのである。 わが国のエビ需要の大半が輸入養殖エビによってまかなわれていることはよく知られているが、近年では高級品のクルマエビにも台湾物が強い影響を与えている。ウナギは調整品=白焼きを含め、輸入が国内需要の半ばを越える。北日本の新興養殖業として急成長をとげたギンザケも、チリ・ノルウェー産におされ、89年につぎ91年にも価格が暴落した。92年にはやや持ち直したとはいえ、サケ・マス総供給量が50万トンをこえる現状では、産地価格の立復は600円程度にとどまらざるをえなかった。以上の3者は国内養殖生産が国際的需要関係のなかに完全にくみ込まれている。 カキ、ハマチ、マダイにも輸入の影響が一部及んでいるが、カキは生産方法の革新により乗りきり、越冬できない韓国ハマチ(1年魚)は品質的に問題が残るようである。それよりも養殖業の将来展望と関わり、餌料の問題が注目されよう。 すなわち1992年推定ではイワシ漁獲量が300万トンをわった。餌料価格の上昇は養殖経営全般に多面的影響を及ぼそうが、長期的には生エサから配合飼料に転換せざるをえまい。とすれば、近年急増しているミール輸入がいっそう加速され、その品質・価格・数量が養殖業を左右する要因となろう。
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