本研究では、操作が極めて単純な、魚類ウイルス病診断法の開発を目的とし、抗原抗体反応に基礎をおくサンドイッチ法を用い、サケ科魚類の病原ウイルス、IHNVとIPNVをモデルとして、反応条件、担体の種類等を検討し、以下の成果を得た。 1.サンドイッチ法の担体として、3種のメンブランフィルタ-の有用性を比較し、ニトロセルロ-ス膜を選択した。一方、細胞のアセトンパウダ-によって使用抗血清の呼吸を行うこと、ならびに、細胞培養液をビオチン標識特異抗体の希釈用溶液として用いることによって、非特異的な反応を著しく抑制することができた。また、上記2種ウイルス以外の魚類病原ウイルス、4種を供試し交差性を検討したが、交差反応は見られず、使用した抗体の特異性が確認された。さらに特異抗体を吸着させた後にブロッキングを行ったため、ドットブロット法に較べ、反応時間2時間短縮することができた。最後に、1担体に2種の上記ウイルスに対する特異抗体を位置をかえてそれぞれ吸着させること、及び両ウイルスに対するビオチン標識特異抗体を混和して反応させることにより、一つの担体上において複数のウイルスの検出が可能であることを確認した。 2.特異抗体を吸着させた担体を室温乾燥、凍緒乾燥ならびに湿潤状態で保存し、経時的に反応性を調べた結果、最低5カ月間の保存には耐え得ることを明らかにした。 3.実験感染魚からのウイルスの検出に本法を応用し、両ウイルスの検出・同定が可能であることを確認した。 上記研究結果から本診断法が、魚類ウイルス病の簡便かつ迅速な診断法として有用であり、また、特殊な器具を必要とせず、養殖現場での実施にも極めて適した方法であることが確認できた。
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