研究概要 |
底曳き網漁業などでは,魚が漁場内に比較的均一に分散しているため,1投網あたりの漁獲量が資源量に比例すると仮定できる。これに対し,まき網漁業では1投網で1魚群を漁獲するため,1投網あたり漁獲量は魚群の重量を表すことになり,従来の資源量推定法は用いることができない。まき網漁業では魚群を採索して投網するので,採索時間あたり投網回数が魚群の数を反映すると考えられ,これから推定される魚群数に魚群重量をかけることによって資源量を推定することができる。 この方法を北海道南東部海域のマイワシのまき網漁業に適用した。この海域では銚子以北のマイワシの漁獲量の1/2〜1/3を占める大規模なまき網漁業が行われている。資料には1976年から1984年までのQRY(定時船間連絡記録)を用いた。 魚群重量は,年平均83〜300tと推定された。7月に少なく9月〜10月に多くなる傾向がみられた。また,1976年から1984年にかけて増加傾向にあった。単位面積あたり魚群数は年平均0.024〜0.039群/km^2,単位面積あたり資源量は2.0〜11.7t/km^2と推定された。 推定結果では,漁場面積と資源密度に負の相関がみられた。これは,資源量が多いと港の近くだけで操業するためと考えられた。魚群重量と魚群数の間には正の相関がみられた。資源量が増加すると大きな群れを組むとも解釈できるが,魚群数が多くなると漁業者が大きな魚群を選んで漁獲している可能性もある。ここで推定した資源量は漁獲対象となっているものに限られていることから,魚群選択がある場合には推定値と実際の資源量の動向が異なることになり注意を要する。そこで,この影響を魚群選択モデルを構築して検討した。
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