研究概要 |
有毒渦鞭毛藻Alexandrium catenellaおよびA.tamarenseは,毎年麻痺性貝毒を引き起こし水産増養殖ならびに食品衛生上大きな問題となっている。しかし本属の形態は酷似していることからその分類は極めて困難で、毒量も株により異なることから,簡便で客観的な識別法が急務となっている。本研究は,有毒渦鞭毛藻Alexandrium属の種内・種間ならびに有毒株を識別可能なDNAプローブを開発することを目的とした。 昨年度の研究により,田辺湾および大船渡湾から分離された毒量や毒組成の異なる両種が選別され,無菌クローン培養系により本藻から初めてDNAの分離が試みられた。しかしながら制限酵素による消化が困難であることから,本年度は本藻から新たに確立したDNA抽出法にCTABを用いた精製法を取り入れることによりDNA分離法を確立し,50kbp以上の高分子DNAを得ることが可能となった。 次にこれを鋳型として,17SrRNA3´末端と24SrRNA5´末端に設定した1組のプライマーを用いてPCRを行なった結果,両種のすベての株において約610bpのDNA断片が増幅された。これら断片の部分塩基配列を決定した結果,本断片はITS(インターナルスペーサー)1,5.8SおよびITS2領域の550bpを含むことが確認された。 さらに本DNA断片を制限酵素AluIおよびRsaIにて消化した結果,いずれの種においても制限酵素断片長多型が認められ,両種間においてその切断様式は異なっていた。次に各株のITS部位の塩基配列を決定したところ,大船渡湾と田辺湾産A.catenellaでは極めて高い相同性を示した。また大船渡湾産とアラスカ産のA.tamarenseのそれも高い相同性を示したが,タイ産A.tamarenseとは低い相同性を示した。一方両種間において本領域に多くの塩基置換が認められることから,各々の種に特異的なDNAプローブ作製の基礎が確立された。
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