研究概要 |
魚類の種苗生産が盛んになるとともに、病原微生物を原因とする種々の疾病が多発し、安定した種苗供給の阻害要因となっている。これらの疾病を防ぐためには、病原微生物の感染機構を解明するとともに、仔少魚の生体防御機構を検討して、予防対策をたてる必要があると思われる。本研究では、種苗生産期のマダイの疾病予防対策の基礎的研究としてマダイ仔稚魚の免疫機構の発達のうち、腎臓の造血組織、胸腺、脾臓などの主要リンパ様器官の形態学的発達について研究した。 供試魚には、ふ化日を0日齢とし、ふ化直後から9週齢のマダイを用いた。供試魚をブアン氏液で固定し、定法に従い、パラフィン切片を作製し、H.E.染色を行い、光学顕微鏡で観察した。また、供試魚を2.5%グルタ-ルアルデヒドと1.5%オスミウム酸で2重固定し、定法に従い、エポキシ樹脂に包埋した。そして、超薄切片を作製し、酢酸ウラニルとクエン酸鉛で2重染色して、JEMー100S電子顕微鏡で観察した。 2日齢魚の左右腎臓の間の腔内に造血幹細胞がみられた。4日齢魚では、間葉系細胞からなる脾臓の原基がみられた。6日齢魚では、脾臓内に赤芽球がみられた。10日齢を過ぎると、腎管内側および背側に、主に未熟赤芽球からなる造血組織が形成された。また、第3,4鰓弓の背側の体壁上皮内に胸腺の原基がみられた。12日齢魚では、胸腺に多数のリンパ球やリンパ芽球がみられた。14日齢魚では、腎臓の造血組織に細胞質に顆粒をもつ細胞がみられた。4週齢魚では、腎臓造血組織、6週齢魚では、胸腺および脾臓の基本構造がそれぞれ完成した。腎臓造血組織と脾臓では、明確にリンパ球と同定できる細胞は認められなかった。今回、機能面の発達に関する研究はできなかった。しかし、本研究の結果から、マダイにおいては、仔魚期ではリンパ様器官が未発達なことが判明し、免疫機構は未発達であると考えられた。
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