研究概要 |
本研究は魚類病原菌の病原性に関与する遺伝子の構造解析と機能の解明を行う。平成4年度の研究実績は以下の通りである。 Aeromonas hydrophila 28SA株より2種類(AAH3,AHH4)、AH-1株より1種類(AHH5)、A.salmonicida 17-2株より2種類(ASH3,ASH4)およびA.sobria33株より1種類(ASA1)の計6種類の溶血素遺伝子がクローン化出来た。AHH3、AHH4およびAHH5はそれぞれ1,476、1,467および1,563塩基のタンパク質翻訳領域よりなり、推定分子サイズはそれぞれ54,176、54,158および53,779であった。これらの溶血素の分子サイズをマキシセル法により求めた結果、すべて52kであった。ASH3は1,467塩基よりなり、コードしているタンパク質の推定分子サイズは54,188であった。マキシセル法で求めた分子サイズ52kと推定分子サイズはほぼ一致した。ASH4は1,734塩基のタンパク質翻訳領域よりなり、推定分子サイズは63,400であった。マキシセル法で求めた分子サイズは62kであった。ASA1は1、464塩基よりなるタンパク質翻訳領域を持ち、コードしているタンパク質の分子サイズは53,920で、マキセシル法で求めた分子サイズ52kであった。 クローン化した溶血素遺伝子より推定されるアミノ酸配列と既知の細菌の溶血素のアミノ酸配列とそれぞれ比較したところ、AHH3、AHH4、AHH5、ASH3およびASA1はA.hydrophileのaerolysin(AHA)(Howard et al.,1986)及びA.trotaのaerolysin(Husslein et al.,1987)と全体的に非常に類似した。その内AHH3、AHH4、AHH5およびAHAはそれぞれの相同性は90%以上であった。また、ASH3はASA1より1アミノ酸多いのみで、その他の配列はすべて一致した。ASH4はVibrio cholerae EL Tor溶血素およびV.vulnificus溶血素遺伝子と部分的に類似する構造を有していた。 クローン化した溶血素遺伝子が大腸菌で産生する溶血素は菌体外に分泌され、種々の動物の赤血球に体する溶血活性は異なった。AHH5およびそれに類似する遺伝子は由来に関係なく多くのエロモナス属細菌より検出された。
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