研究概要 |
魚類病原細菌は菌体外に種々のタンパク質毒素を産生することが知られている。しかし、これらのタンパク質毒素を産生する遺伝子についてはほとんど解明されていない。そこで、我々はエロモナス属細菌の病原性因子の解明を目的として、エロモナス属細菌が産生する溶血毒素遺伝子の構造および機能解析を行った。 Aeromonas hydrophila2株、A,salmonicida2株およびA.sobria1株より染色体DNAを抽出精製し、制限酵素Sau3A1で部分分解した。次いで、ベクターCharomid9に連結し、λファージ粒子にパッケージングを行い、大腸菌DHI株に形質導入し、遺伝子ライブラリーとした。遺伝子ライブラリーより溶血素を産生するクローンを血液寒天平板上で選択した。得られたクローンをベクターpuc118あるいはpUC119にサブクローニングし、塩基配列をジデオキシ法にて決定した。クローン化した溶血素遺伝子のエロモナス属内での分布をコロニーハイブリダイゼーション法により調べた。 A.hydrophilaから5種類(AHH1、AHH2、AHH3、AHH4、AHH5)、A.salmonici-daから3種類(ASH1、ASH3、ASH4)、A.sobriaから1種類(ASA1)の計9種類の溶血素遺伝子をクローン化した。塩基配列を貞定し解析を行った結果、AHH1およびASHはVibrio choeraeおよびV.vulnificusの溶血素遺伝子のよく保存された領域と一致する領域が存在した。AHH3、AHH4、AHH5、ASH3およびASA1はA.hydrophilaおよびA.trotaのaerolysin遺伝子と類似の構造を有していることが分かった。AHH2およびASH1は既知の溶血素遺伝子との相同性は認められなかった。AHH1、AHH3あるいはASA1に類似の溶血素遺伝子はエロモナス属内に広く分布存在することが分かった。また、複数の溶血素遺伝子を保持する株が存在することも確認できた。クローン化した溶血素を大腸菌で産生させた場合、AHH2を除き菌体外に分泌された。また、種々の動物に対する溶血性性は異なった。
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