研究概要 |
ヤマメの胚肝由来のYEL系細胞株は、培養の初期に産生していた血清蛋白を産生しなくなり、かわりに、培養液中に多量の糖蛋白を放出するようになった。この糖蛋白は、細胞表面にも存在し、細胞表面マ-カ-として利用できると考えられたので、イオン交換クロマトグラフィ-等で培養液および細胞表面より精製している。また、まだ部分精製の段階ではあるが、抗体を作成中である。YEL系細胞株を培養した上清(conditioned medium)は他の細胞株の増殖を著しく阻害する事が判り、細胞の増殖と分化に関わる細胞間情報伝達因子である可能性が強い。YEL系細胞株は魚病ウイルスに対して感受性が低く、かつ、ウイルス感染による細胞変性効果も極めて微弱である。このことは本細胞系にはinterferon,tumor necrotic factor等の抗ウイルス活性因子が存在することを示唆しているので、抗ウイルス活性等についても検討を開始している。 マゴイの腎臓の造血幹細胞はコイの血清存在下で増殖可能である。すなわち、コイの腎臓細胞を軟寒天中でコイの血清と共に培養すると、血液幹細胞が増殖してコロニ-を形成することが判った。このコロニ-形成細胞をしらべると、多くは好中球や単球に類似いた成熟した顆粒球系の細胞で、一部に未熟細胞もしくは芽細胞が見られた。この実験系は血中のコロニ-刺激因子(CSF)のアッセイ系として有用なので、その確立を急いでいる。また、コイの血中にはCSFが存在することが考えられるので、その精製は開始するとともに、アジュバントやLPSによる血中CSFの上昇をしらベている。
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