研究概要 |
ヤマメ胚肝由来細胞株YEL‐13は、細胞表面からGiemsa染色やPAS染色で強染される、比較的長鎖の糖蛋白を出している。電顕的には、この細胞は、異形性を示す核を有し、microfibrilがよく発達しており、培養初期の肝細胞特有の形態を失っていた。また、これらの細胞から細胞膜を利用して電子密度の高い顆粒が、細胞外に延びて出ている像が随所で観察された。このYEL‐13の産生する糖蛋白は培養液中にも放出されており、Parcoll密度勾配遠心法により精製すると、密度1.04g/mlの分画に多量の糖蛋白が検出された。この分画に対する抗血清は、YEL‐13から出ているPAS陽性の長鎖ならびにヤマメ稚魚の肝臓を強く染色し、肝臓が産生している糖蛋白である事が確かめられ、糖蛋白が細胞膜に結合して細胞外に放出されているものと考えられた。この分画より糖を抽出して,HPLCによる分析を始めている。これらの事より、この糖蛋白が本来、正常な肝実質細胞で産生されていたものが、培養下で細胞が不死化するにともない、過剰に産生されるようになったと考えられるので、この糖蛋白の魚類の肝細胞内での役割を検討中である。 コイの造血幹細胞は、コイの血清を添加した軟寒天中で増殖可能で、大小さまざまのコロニーを形成し、それを構成する細胞は、未分化なものから分化した顆粒球と考えられるものまであった。この培養系を用いて、adjuvant等を注射したコイの血清のコロニー形成に与える影響を調べたところ、コロニー刺激活性を高める作用があった。この造血細胞培養系は、魚類の造血因子、特に顆粒球の成長因子、の検索に有効な事が判ったので、現在、血清中から造血因子の精製を始めている。また、c‐fos, c‐ras等のoncogeneを造血細胞にtransfectionすると増殖が良くなる事も確かめられた。
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