研究概要 |
申請者は軟体動物の組織に遊離のD型のアスパラギン酸(DーAsp)が多量に、一部の種ではLーAspよりDーAspが上回って、含まれることを報告した。さらにDーAspの誘導体であるNーメチルーDーアスパラギン酸(NMDA)をアカガイから、また分子内にDーAspを含む特異なジペプチド、βーDーアスパルチルグリシン(βーDーAspーGly)をアメフラシから新たに発見し報告した。その後これらDーAspおよび関連化合物の分布を海綿、腔腸、環形、軟体、節足(甲殼類)、棘皮、原索、脊椎(魚類)の各種動物類、緑藻、褐藻、紅藻の各種海藻類、植物および動物プランクトン類(Chaetoceros salsugineum,Porphyridium cruentum,Artemi a salina)の合計102種について、組織毎の分析を行った。その結果、DーAspはほぼ全ての無脊椎動物類に検出され、しかも全Aspの20ー60%を占める種が多かった。また今回は脊椎動物の魚類の一部にもにもDーAspが認められ注目された。すなわち赤身魚のマイワシ、サンマ、マサバ、ブリには何れの組織でも全く検出されないか、検出されても痕跡程度であるのに対し、白身魚のスケトウダラ、キンメダイ、チダイ、マコガレイ、コイには量的多寡はあるもののDーAspが検出された。白身魚でもいずれの魚種とも筋肉組織には少なく、内臓組織に高い傾向がみられた。代謝酵素ではムラサキイガイの中腸腺にDーアスパラギン酸トランスアミナ-ゼ活性が、またスルメイカ肝臓にDーアスパラギン酸オキシダ-ゼ活性が確認された。βーDーアスパルチルグリシンについてはアメフラシの成長、成熟との関係や餌料との関係で分析を進めている。NMDAについてはアカガイを用いて内因性、外因性(海泥中のバクテリアによる産生も含め)の産生経路を調べている。
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